インプラントについて(2002年のテキストより)
インプラントと総称される、歯を失った部位の顎骨に埋め込まれる人工歯根は、骨結合を得やすいチタン製歯根形状のタイプについては、10年経過時の平均で90%以上の成功をおさめているとの報告が海外で多数発表されています。 日本の実情がこれに当てはまるわけではありませんが、すべての再建修復治療の厳密な成功率とくらべても、成功を期待できる治療の選択肢として近年前向きに捉えられるようになりました。
当院でも、欠損修復のオプションとして、治療に組み込むケースも相当量となりました。 ただ、オーソドックスな術式が有効な場合は、一般には通法どおりの修復治療をいたしております。 すなわち義歯でかめない方には噛める義歯。 歯を失った方でまわりの歯も治療が施されている場合はいわゆるブリッジという修復法を採用します。 また不要な智歯があればそれを欠損部に移植することもあります。 取り外しの義歯が嫌だというネガティブな動機が患者さんをインプラント治療に導いているようですが、本当にしっかりした義歯をお入れになっている方が非常に少ないのも、義歯に対するあきらめを増幅させている要因かと存じます。 費用の問題も含め管理の難しいインプラント修復と比較して必ずしも取り外しの義歯がすべてに劣るとは考えておりません。
しかしながらインプラントは特定のケースにおいては、修復治療におけるパフォーマンスとして、他の方法では得られない顕著な働きをすることがあります。 ブリッジ製作のために隣在する良い歯を犠牲にする必要がありませんし、また歯を失い入れ歯になることが心理的に負担となっています方には、機能的問題以上にインプラントは大きな福音となることもあるようです。
一般にインプラント植立自体は(神経・血管吻合もある形成外科的内容に比べればはるかに)簡単で、治療時間回数もすくないうえ、システム化され誰でもある程度の結果がだせるため(精密な修復治療の経験がない術者でもすぐ飛びつきやすく)、たとえ治療費用が高額となっても患者さんの満足度が高い治療といえます。 そのような状況から現在ではコマーシャルベースでインプラントを宣伝する医院も多くみられ、小医院までもがインプラントセンターなどと銘打っていますが、正論としては歯科医は患者さんの協力のもとでインプラントも義歯も必要の無いように、ひとつひとつの歯を守ることに専念することが先決かと存じます。
参考)インプラント症例集
