歯周病の予防はいつごろから始めたらよいのでしょう? (2002年のテキストより)
歯の強さは生まれつきのものもあれば、フッ素の摂取量によるものもありますが、歯を磨かなくともムシバにならないという方は確かにいます。 それでも歯周病は別もので、一度も詰め物などされたことのない方が、数年の間に殆どすべての歯を失うことも不思議ではありません。 歯科医院に来られる患者さんでは40代半ばから50代前半ぐらいに奥歯の大臼歯がぐらつき出し、受診時には歯の根を支えるアゴの骨(歯槽骨)が保存困難な状態まで溶けてしまっているといった例が少なくありません。
歯周病予防に対する専門的な説明は現在作成中ですが、患者さんが歯肉の出血を気になりだしたら初期以上、腫れに気づいたら中等度、ぐらつき痛み、ひどい腫れを感じたら重症といっても間違いはないようです。
一般に毎日のホームケアである歯磨きが的確に行われれば、初期の段階なら特別な処置がなくとも歯周病の進行を防止できます。 中等度以上ではよほどの努力があっても歯周病が完全にブロックされることはありません。 なぜなら (歯周病が進み歯の根もとの歯槽骨が吸収してできた歯と歯肉の隙間の) 病的な歯周ポケットが5mm以上の深さに及ぶと、当然歯ブラシの先端もその中までは清掃不可能で、ポケットの内部では歯石に粘着したバクテリアの活動が慢性的に続けられているからです。 バクテリアの出す病原性物質は歯肉の炎症を引き起こし、周囲骨の破壊を進めます。 それによってますます歯周ポケットは深くなり続けます。
このような段階では歯周ポケット内の歯石の除去と、ポケットの除去による清掃性の向上を狙った、歯周病の外科的治療(他サイト;参考動画)が考慮されますが、健康な当時と比べ歯と歯の隙間がひろがり清掃にも根気と熱意が要求されます。 また歯を分割したり、歯にかぶせものが必要になることも多く、歯根破折や修復物のゆるみによる冠内部の崩壊等、修復的な問題が将来危惧されることを回避できません。

結局、歯周病の予防は若い頃からの毎日のポイントをおさえた歯ブラシ(デンタルフロス・歯間ブラシも使えることが望ましい)に加え、定期的な歯科医院でのチェックと簡単な清掃(スケーリング)が基本です。 また20代の方でも歯周ポケットが4~5mmの部位や、歯肉からの出血が簡単には取れない歯石による場合は、局所麻酔下で少数歯を丁寧に清掃しておくことが、20年後の歯周病の重症化を防ぐ近道となるでしょう。 歯周病は患者さんが気になったときは、ご本人が思っているより1段階は進んでいるものです。 早い段階からのチェックと適切な手当てが肝心です。 しかし、なによりも歯磨きというのは言うまでもありませんが。

